研究 · インターフェース · 2026年10月
声は、静かに戻ってくる
音声入力が戻ってきた。ただしAlexaとしてではなく、文章の口述入力として、そしてAIとの会話として。 どれだけ速いのか、どれだけ聞き違えるのか、どれだけ疲れ、どれだけ気恥ずかしいのか。ここ2年の研究と、その土台になった古い研究を読んだ。意外だったのは、いちばん速く変わっているのが、コンピュータに話しかける人の度胸ではなかったことだ。変わっているのは声のほう——声が静かになっている。
開示。 私は音声入力アプリ Speak-Y を作っている。企業が自社について出した数字は、本文でそう明記し、グラフでは独立したデータと区別して斜線で描いた。
アシスタントは足踏み。口述入力は急伸——自己申告では
「アレクサ、タイマーをセットして」と言えば、それは音声入力の一つ目の種類だ。メールをキーボードで打つ代わりに口で吹き込めば、二つ目の種類になる。
種類は全部で五つあり、ここ2年でそれぞれ違う道をたどった。アシスタントへの命令、文章の口述入力、ボイスメッセージ、AIモデルとの音声での会話、そしてプログラミングやAIエージェントへの指示出しに使う声である。
一つ目の種類は、広がりが止まった。米国でスマートスピーカーを持つ人は2021年に33%、2025年に35%。調査会社自身が、4年間ほとんど動いていないと書いている。1
例外は英国で、同じ期間に25%から45%へ伸びた。主にAlexaのおかげである。2 持ち主一人あたりの利用は、もっと長く伸び続けた。スピーカーで週にこなすタスクは、2017年の7.5件から2022年には12.4件になった。3
それでも商売としては、第一の波は失敗した。Amazonのデバイス部門は2017年から2021年までに250億ドルを超える損失を出した。人々はEchoを目覚ましや天気予報に使い、買い物には使わなかったからだ。4
第二の波は、ほとんど企業自身の発言の中にしか見えない。口述入力アプリのWispr Flowは、2025年11月の評価額7億ドルから、2026年8月には20億ドルになった。5
Googleによれば、Geminiアプリの月間ユーザー10億人超のうち63%が「声を使っている」。どう数えたのかは明かしていない。6 Appleは、Siriへのリクエストが2024年の1日約15億件から、2026年には25億件超に増えたと言う。7
Pew、YouGov、Edison、Ofcomといった大手の独立調査は、口述入力やAIとの音声会話を、まだ独立した質問として尋ねていない。いちばん近い調査では、12歳以上の米国人の57%が、打ち込みか音声かを問わず、生成AIアシスタントを一度は使ったことがあった。8
つまり、第二の波の成長曲線を描いているのは、利害関係のある当事者たちなのだ。
塗りつぶしの棒:方法と標本が分かっている調査。濃い目盛りは前の年の値を示す。斜線の棒:企業が自社について示した数字で、外からは検証できない。目盛りは以前の主張を示す。左右は同じ尺度ではない。
Edison Research(SSRS経由)128 · YouGov9 · Apple(報道経由)7 · TechCrunch5 · Google(報道経由)6
三つ目の種類、ボイスメッセージは大衆的な習慣だが、伸びている習慣ではない。WhatsAppが最後に公式に出した数字は、2022年3月の1日70億件だった。10
2026年2月、米国人2,442人を対象にしたYouGovの調査では、ボイスメッセージを週に数回使う人は約10%で、41%はこの形式が自分には関係ないと答えた。使う回数が減った人(12%)と増えた人(11%)は、ほぼ同数だった。9
書き写しなら3倍速い。自分で書くなら約1.4倍
音声について最も引用される数字は、話すほうが打つより3倍速いというものだ。これは正しい——書き写しに限れば。
その根拠になった実験では、48人(各言語24人)がiPhoneで短い既成のフレーズを書き写した。英語では音声が毎分153語、画面キーボードが52語。中国語(普通話)では123語対43語だった。11
著者たち自身、これは実験室で達した上限だと断っている。そして、書き写しで文章を書く人はいない。
2020年、Foley、Casiez、Vogelは28人に、スマートフォンで自分の文を作ってもらった。三つの簡単な絵をつなぐ一文である。実際に言葉を話したり打ったりしている間だけを見れば、声はやはり3倍速かった。毎分116.5語対35.1語。
ところが、考え、話し、直すまでの試行全体で数えると、1通のメッセージにかかった時間は音声で20.8秒、キーボードで29.2秒。3倍ではなく、約1.4倍である。12
文章作成の課題。各棒の淡い部分は最初の一語までに考えていた時間、濃い部分は話すか打つ時間に、修正の時間を足したもの。12
差を食ったものは二つある。一つは、最初の一語までの時間だ。話すつもりのとき、人は2倍長く考えた。11.0秒対5.3秒。打つときは書きながら考え、話すときは先に文を組み立てる。
もう一つは、修正の高くつくことだ。二つの方法と二つの課題を通じて、修正が必要になった試行は毎分54.6語。きれいに済んだ試行は141.1語だった。
目安として、オンラインのタイピングテストに参加したボランティアの平均は、物理キーボードで毎分52語(168,000人)、13 スマートフォンで36語(37,000人)だった。14
今日の音声認識で、声で文章を作るのとデスクトップのキーボードで作るのを比べた対照実験はない。最後のものは1999年で、初めて使う人が声で文章を作ると修正込みで毎分7.8語、キーボードとマウスでは19語だった。書き写しでは13.6語対32.5語である。15
自分で測る:指と口、どちらが速いか
ストップウォッチ二つと、一つの文。このページはマイクを一切オンにせず、あなたの声は聞こえない。かかった時間を測り、二つの時間を二つの速さに換算するだけだ。
- 打つ下の文を打ち込んでください。最初のキーを押した瞬間から、Enterを押すまで、一つ目のストップウォッチが動きます。
- 話すボタンかスペースキーを押し続けながら、同じ文をふだんの速さで読み上げてください。押しているあいだ、二つ目のストップウォッチが動きます。
- 比べる同じ文に、二つの時間。ページがそれを毎分の語数に換算し、研究の数字と並べます。
木曜の通話を午後にずらして、それまでに先週のメモを送ってもらえますか?
あなたの速さを研究と並べる
ここで測れるのは口の速さで、口述入力の速さではない。ここでは何も認識されず、直すものもないからだ。二つの数字の比が、声があなたに与えうる最大値である。
Foleyの実験では、話す部分だけなら打つより3.3倍速く、試行全体では1.4倍だった。考える時間と直す時間を経ると、速さの比のうち約40%しか残らなかったことになる。
機械に何が聞こえるかは、誰が話すかで決まる
静かな部屋で、アナウンサーのような発音で「会議を木曜の十時に移して」と言えば、優秀な認識器は正しく書き取る。同じことを強い訛りで、カフェの騒がしさの中で言えば、「会議を目標の十字に移して」と打たれるかもしれない。
認識の良し悪しは単語誤り率で測る。誤った単語、抜けた単語、余計に足された単語の割合だ。2025年10月、公開の標準的なリーダーボードで最良のモデルは、テストセット全体の平均で5.63%だった。
多くの口述入力アプリの中で動いているオープンモデル、Whisper large-v3は平均7.44%。16 比較のために言えば、丁寧なプロの書き起こしは、2017年に録音された電話の会話で5.1%と測定されている。17
こうした平均は、誰が話しているかを覆い隠す。世界各地の訛りを含む英語の会話を集めたデータでは、Whisperは単語の19.7%を誤った。米国英語のきれいな朗読では2.7%である。
ナイジェリア英語とジャマイカ英語では、より強力なモデルでも20%を超え、ある学術モデルは45%を超えた。18
2020年、五つの商用システムは、黒人の話者の単語の35%、白人の話者の単語の19%を誤った。同じシステムで、誤りがほぼ2倍である。19
この文は26の語に区切ってある。誤りは最も害の大きい場所に置いた。特定のシステムを再現するためではなく、その率が何を意味するかを見せるためだ。
Open ASR Leaderboard、2025年10月16 · Microsoft Research、2017年17 · EdAcc18 · Koeneckeほか、2020年19 · Careless Whisper、2024年20
生成型の認識は、新しい種類の失敗を持ち込んだ。でっち上げである。Whisperは書き起こしの約1%で、まるごとのフレーズを作り出した。そうした創作の38%には、暴力や虚偽の主張など、有害な内容が含まれていた。20
失語症の人によくある長い間は、でっち上げを起こりやすくした。創作された一文は、聞き違えた一語より始末が悪い。すらすら読めてしまうからだ。
ボトルネックは認識から修正へ移った。声による編集には、未解決の問題が二つある。命令と、書き取るべき文章を見分けること。そして、直す場所を指し示すことだ。
誤りの近くをタップしながら修正を言い、どこに何が入るかは言語モデルに判断させる。16人のテストでは、この方法で従来の最良の方法より作業時間が16.4%、キーボードのタップが47.5%減った。21
口述した文章は冗長で締まりがなくなりがちで、だから新しいアプリは貼り付ける前に言語モデルで書き直す。そうしたツールを7〜10日使う日記調査では、書き手12人のうち9人が適応し、快適さの中央値は7点満点の5だった。
疑いを残した人たちが挙げたのは、昔からの難所だった。話しながら次の文を考えること、そしてカーソルをあるべき場所に置くこと。22
声が速めるのは口であって、段取りではない
声が3倍速いなら、なぜ書くことは3倍速くならないのか。書くことの大半は、打つことではないからだ。手紙を書く作業を調べた1983年の研究では、文章を作る時間の約3分の2が構想に使われていた。試した条件によって58%から78%である。
手紙の出来は、手書きでも、口述でも、話して作っても変わらなかった。23 出力の経路が速くなっても、速くなるのは残りの3分の1だけだ。
その仕組みを2000年に示したのがベン・シュナイダーマンである。話すことと短期記憶は同じ資源を奪い合うが、手を動かすことは考えることと並行して進む。
彼の研究室の実験の一つでは、声による命令はマウスより12〜30%速かった。しかし声に出して言うと、あとで打ち直さなければならない記号を覚えておくのが難しくなった。24
その後の研究は、書き写しから問題解決までの一本の線の上に並ぶ。仕事が書き写しなら、声は速さで勝ち、楽にも感じられる。仕事が文章作成なら、声は少し速く、感じ方は変わらない。
仕事が問題解決になると、声のほうが頭の負担は大きい。 医療用のチャットアシスタントを使った50人では、難しい課題でも簡単な課題でも、音声が測定上の精神的負荷を高めた。25 救急医35人が声で記録をつけると18.1%遅くなり、誤りは32件に対して138件だった。26
はっきり得をするのは、手やつづりがボトルネックになっている人だ。学習障害のある生徒は、音声認識を使うと手書きより良い作文を書いた。ほかの生徒では差がなかった。27
Ruan11 · Foley12 · 創造的な指示、2026年28 · Riegelほか29 · Chenほか25 · Hodgsonほか26 · Shneiderman24 · MacArthurとCavalier27
AIに話しかけることも、同じ線の上にある。私が見つけた最大の研究では、プログラミング入門講座の学生919人が、AIツールへの指示の出し方を自分で選べた。10人に9人近くがテキストだけを選んだ(88.5%)。音声だけは4.8%、両方は6.7%。
手を加えない音声の指示は、一度でうまくいく割合が低かった。一つ目の課題で35%対52%、二つ目で38%対58%。学生が書き起こしを編集すると、差はもう統計的に有意ではなくなった。29
創造的な課題では、声のほうが最初の指示が早く出て、追加の指示も多く、長くなった。しかし、感じる労力も、結果への評価も変わらなかった。28
Riegelほか、ITiCSE 2026、n = 91929
考えを声に出すと頭がよく働く、という通説は半分しか当たっていない。94の研究を通じて、ただ思考を口にするだけでは正確さは変わらず、作業が遅くなるだけだった。正確さが上がったのは、推論を説明しなければならないときだ。30
AIモデルに問題を声で説明することは、役に立つのかもしれない。それを試した人はまだいない。
声は量に応じて疲れる。口述入力の量は、誰も測っていない
一日じゅう打てば手が疲れる。一日じゅう話せば、疲れるのは別のところだ。そして、どれだけ話せば安全かという科学的な一日の上限はない。よく測られているのは、声を仕事にする人がどれだけ声を使っているかである。
声の障害が多い職業である教師は、勤務時間の23%で声帯を鳴らしている。勤務外では13%、週末は12%。2007年の教師31人の研究だ。31 より新しい教師26人のグループでは、16.2%、8.4%、8.0%だった。32
この鳴らしている時間を、発声(フォネーション)と呼ぶ。数えるのは声帯が実際に振動している瞬間だけで、言葉と言葉のあいだの間は含まない。
体はすぐに気づく。10人の研究では、大声で朗読すると、声の努力を示す客観的な指標が最初の15分以内に上がり、本人は30分後にそれを感じた。33
教室の音量で2時間音読したあと、教師86人は、声はおおむね4〜8時間で回復したと評価した。1日以上残るわずかな疲れもあった。
ただし論文は、正確な数字について自分自身と食い違っている。要旨では、4〜6時間で90%、12〜18時間で完全に回復したとしている。34
大声で2時間朗読したあと、自己評価の疲労がどれだけ消えたかの割合。曲線は論文の要旨にある二つの点、4〜6時間後の90%と12〜18時間後の100%を通して描いた。結論部はもっと遅い50%と90%を示している。口元のマイクに向けた静かな口述入力には曲線そのものがなく、その帯はわざと空けてある。
HunterとTitze、2009年、教師86人、自己評価、要旨の数字34 · Xueほか、2019年、n = 1033
一日じゅうコンピュータに話しかける仕事に、いま最も近い職業はコールセンターだ。15の研究を通じて、オペレーターの33〜68%がキャリアのどこかで声のトラブルを抱え、調べた時点で抱えていたのは27%だった。35
ある調査では、声の症状はオペレーター一人あたり6.8個、一般の人では1.7個だった。36
口述入力の利用者についての直接の証拠は、1990年代と2000年代のものしかない。当時の口述入力は、一語ごとに間を置いて話すものだった。
ある症例報告では、手の痛みのために音声認識に切り替えた5人が、声を痛めた。音声療法を受け、一度に使う時間を短くすると、5人中3人が良くなった。37
10人の筋活動の記録は、負担が消えるのではなく移ることを示唆した。前腕と首、ある程度は肩の持続的な緊張が減り、喉頭の筋肉である輪状甲状筋では増える傾向が見られた。38
いまの口述入力は、疑われていた原因——一語ごとに間を置く、平板で機械的な話し方——を取り除いた。マイクも口の近くにあるので、小さな声で話せる。これはもっともな希望であって、研究結果ではない。
いまの口述入力アプリやAIモデルの音声モードを使う人について、声の負担を測った研究は一つもない。
問題は場所ではない。誰が聞いているかだ
スマートフォンに道を尋ねる場面を思い浮かべてほしい。まず家で、次にバスの中で、それから同僚に囲まれた自分の席で。たいていの人は、答えが3回変わる。
これについて一番いい数字は、英国の小さな実験から来ている。23〜32歳の20人が、無地の背景の前で男性が声かテキストで検索する短い動画を見て、自分も同じことをする場所と相手に印をつけた。声がテキストに勝ったのは運転中だけ、両手がふさがっているときだった。39
場所より、誰が聞いているかのほうが効いた。ひとりなら96%の回答が声を許容し、友人の前では83%、パートナーの前で78%、家族の前で71%。同僚の前では26%。見知らぬ人の前では16%。
相手のうち、声をテキストより有意に受け入れにくくしたのは、同僚と見知らぬ人だけ。場所では、家、助手席、職場だった。彼らの答えを見る前に、自分で試してみてほしい。
ここで、デバイスに話しかけるか?
状況を1回タップすると「はい」、2回で「いいえ」。それから研究の20人と比べてみてください。
どこで
誰の前で
EfthymiouとHalvey、2016年、英国、n = 20、23〜32歳、動画を見ての判断39
アシスタント利用者860人の調査では、恥ずかしさが利用を続ける意向を下げたのは人前に限られ、誇らしさはどこでもそれを上げた。40
それでも規範は動いた。米国の調査では、友人と一緒のレストランで声を使う人は、2017年の約25%から2019年には40%超に増えた。男性が音声コマンドを使う割合は女性の1.54倍で、46%は他人がそうするのを見て苛立つと答えた。41
物珍しさが先に消える。照れも、やがて消える
スマートスピーカーを買った人なら、最初の1週間を覚えているはずだ。タイマー、冗談、音楽、面白半分の質問。やがて物珍しさが消え、残るのが習慣である。
使い始めた人がどう変わるかは、ほぼ家庭のスマートスピーカーでしか測られていない。3週間の研究で、7人の高齢者にEcho Dotが配られた。週あたりの命令は3分の1減った。59.6、50.1、39.7と。
音楽は命令の23.9%から2.9%に落ち、天気と買い物リストは増えた。ある参加者は最初、「この機械に話しかけるなんて間抜けな気がした」と言った。終わるころには7人全員が、自信がついた、これからも使うと答えた。42
Pradhan、Lazar、Findlater、2020年、米国、n = 7、命令1,049件42
もっと長い記録では、様子が違う。平均58週にわたる18家族のGoogle Homeの履歴では、利用はおおむね安定していた。3家族は買ってまもなく数週間スピーカーを使わなくなり(理由はプライバシー、役に立たないこと、習慣がつかなかったこと)、のちに戻ってきた。
完全にやめた家族は調べられていない。家のスマート機器が増えるにつれ、家電の操作に使う割合が伸びた。43
人が離れたのは、便利さ、信頼性、プライバシーのためであって、家で話しかけるのが気まずいからではなかった。
社会的受容性に関する69本の論文のレビューは、受け入れやすさは人がやりとりに慣れるにつれて変わると指摘する。それなのに、日常生活でインターフェースを試す人を追ったのは3本だけで、大半は想像してもらうか、実験室で一度試してもらうだけだった。44
これが、このページにとって中心的な空白だ。職場で口述入力に切り替えた人を追いかけ、気恥ずかしさが週ごとにどう変わるかを測った研究は、見つからなかった。
声をどこまで大きくしてよいかは、文化が決める
メッセージに音声で返すか文字で返すかは、どこに住んでいるかに大きく左右される。
2023年に17の市場で行われたYouGovの調査では、メッセージを文字で送りたい人が66%、音声で送りたい人が7%だった。文字派が最も多かったのは英国(83%)、デンマーク(80%)、スウェーデン(78%)、最も少なかったのはアラブ首長国連邦(38%)。スペインでは文字派54%、音声派13%。45
YouGov、2023年11月、市場ごとに500〜2,001人。公表された本文で名前が挙がった市場のみ表示45
携帯電話も20年前に同じ道を通った。2007年、ハワイのある大学で五つの文化圏の学生を比べた調査では、バスの中で電話で話すことへの評価が、日本出身の学生では5点満点で2.53、スウェーデン出身では3.50、米本土出身では3.44だった。46
日本ははっきりしたルールに落ち着いた。電車では通話しない、メールならいい。そして声を出さずに済む手段が現れるとすぐ、人前で声を出すことから離れていった。
Campbell、2007年、ハワイのある大学の学生 n = 271、出身文化別46
米国では2006年、82%が人前での大声の通話に少なくともときどき苛立っていた。そうした通話によく出くわすという人は、2012年までに50%から39%に減った。47
2014年には、電話を使ってよいとする米国人は、路上で77%、公共交通機関で75%、レストランで38%——そして会議中では5%だった。48 変化は両側から来た。周りの人は寛容になり、かける側は声を落とした。そしてそれは会議室の扉の前で止まった。
オフィスはささやき方を覚えつつある
2026年、AIによる口述入力がオフィスに届いた。最初の報告は数字ではなく、話である。Bloombergは、それが机から机へと広がり、グースネックのマイクが現れ、ささやき声が始まる様子を描いている。49
Computerworldが引用するアナリストは、気恥ずかしさと同僚の気を散らす不安を、行動面の大きな障壁と呼ぶ。完全リモートの企業Thumbtackは200人を超える社員にWispr Flowを配った。同社の技術責任者は、部屋にひとりでも、声に出して話すのに慣れるには時間がかかったと認めている。50
市場は規範が変わるのを待っていない。声のほうを静かにしている。Wispr Flowはささやきモードを売りにし、マイクから1センチほどの距離で話すよう勧めている。51
研究はすでに2018年にもっと先へ進んでいた。MicrosoftのSilentVoiceは、息を吸いながら話す短い命令を認識した。漏れる音は39デシベル未満で、単語誤り率は慣れた話者で1.8%、初めての話者で7%だった。52
人は静けさと引き換えに精度を手放す。2021年の実験で12人は、声を出さず口の形だけで言葉を伝える無声発話を、わざと10〜15%の誤りを混ぜても、誤りなしと同じくらい使いたいと答えた。一方、声に出して話す意欲は下がった。
12人全員が、その理由をプライバシーとセキュリティに求めた。53
いちばん速く進んでいるのは、人が大胆になることではない。声が静かになることだ。
大規模に測られた唯一の場所:医師のカルテ
AIモデルに支えられた音声入力が数千人規模で測定されている分野は、医療だけだ。アンビエントAIスクライブは診察の会話を聞き取り、カルテの下書きを作る。
最大の研究は2026年4月にJAMAに掲載された。約1,800人の利用者を非利用者6,770人と比べると、診察8時間あたりの記録作業が16分、約10%減った。時間外の作業に有意な変化はなかった。スクライブを診察の半分以上で使ったのは32%だけだった。54
医師238人のランダム化試験では、あるスクライブはカルテ1件あたりの時間を41秒縮め(対照群は18秒)、別のスクライブは有意な差を生まなかった。55 対照群のない研究では、燃え尽きが30日で51.9%から38.8%に下がった。56
手作業で確認したカルテでは、18%に抜け落ちが、11.5%にでっち上げの記述があった。5.3%には深刻な害につながりうる誤りがあった。57 声が節約したのは分単位の時間より注意力で、その代償は文章の確認である。
まだ誰も行っていない実験
これは小さな穴ではない。下のカードはどれも、このページが数字で答えたかったのに答えられなかった問いだ。測った研究がないからである。
口述入力を数える調査
無作為抽出の調査で、口述入力やAIとの音声会話を独立した行動として測ったものはない。成長曲線は企業の主張に頼っている。
口述入力で声にかかる量
いまのアプリで何時間も口述する人について、発声時間や声の負担を測った人はいない。
一日の安全な量
一日に何時間話せば声にとって安全か、エビデンスに基づく上限はない。
切り替えたあとの手
声に切り替えると手の使いすぎによる障害を防げる、あるいは治せることを示したランダム化試験はない。
机で文章を書く
最新の認識で、声と物理キーボードで文章を書くことを比べた対照比較はない。最良のデータは1983年と1999年のものだ。
話して過ごす一日
主に声で仕事をする人を追い、精神的な疲れを測った日記調査や長期研究はない。
職場で照れが消えるまで
オフィスで口述入力を使い始めた人を週ごとに追った実地研究はない。習慣についての長期研究は、どれも家庭のスピーカーについてのものだ。
どう確かめたか、何を外したか
私は音声入力と会議の記録のためのアプリSpeak-Yを作っていて、このページの下にもそのバナーがある。この研究を疑いの目で読む理由としては十分だ。
だから、企業が自社について出した数字は——私と競合する口述入力の会社のものも含めて——すべて本文で明記し、グラフでは斜線で描いた。
調査は2026年9月に、四つの問いに沿って行った。普及、速度と精度、疲労と思考、社会的な受け入れやすさ。数字はできる限り、元の出典までたどった。
小さな標本も残した。存在するのがそれだけだからだ。ただし、数字の横には必ず標本の大きさを添えている。
広く繰り返されている数字のいくつかは、ここでは使っていない。出典をたどると崩れたか、引用されているような意味を持たないからだ。Siriの利用が1年で12%減ったという「Gartner」の調査結果。Gartnerの出典は見つからなかった。
「労働者の48%が、話し声をオフィスで最も気が散る騒音だと言う」。これは2008年にフィンランドのオフィスワーカー689人を調べた調査にさかのぼり、口述入力については何も言っていない。
「医師の79%がAIスクライブを拒否した」。ある口述入力ベンダーが、JAMAの研究の比較対象だった非利用者の群を、拒否に仕立て直したものだ。そして、人前でSiriを使ったのは3%だけという有名な主張。元のページはもう存在しない。
全体像についての私自身の読みで、これは意見である。口述入力は、家や車の中、自分ひとりの部屋では当たり前になる。オープンなオフィスでは賛否が分かれたまま、会議には入り込まないままだろう。電話の通話がそうだったように。それを変えうるのは、人の度胸ではなく、声の静けさだ。
出典
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調査は2026年9月に行った。企業が自社について語った数字は、本文でそう明記し、グラフでは斜線で描いている。
英語の原文から翻訳しました。研究と出典の題名は英語のままです。認識ミスの実験の文は、日本語の聞き間違いに合わせて書き直しています。出典の正確な表現が重要な箇所は、上のリンク先の資料をご確認ください。